近年、悪質な情報商材詐欺の被害が増加しています。
「誰でも簡単に、確実に稼げる」
という謳い文句に騙され、高額な商品を購入させられたり、コンサルティング料を払わされたりする被害が相次いでいます。
2020年10月2日には、情報商材を販売する詐欺グループが逮捕されました。
この事件では被害者数は約450人、被害総額は約3億5千万円でした。
当サイトでは情報商材詐欺の手口、現状、情報商材の違法性、返金の法的根拠、情報商材詐欺の返金方法などをできるだけ詳しく解説しています。
情報商材とは?
情報商材の定義と違法性
情報商材とは、副業や投資、ギャンブルなどで高収入を得るためのノウハウと称して、インターネット上の通信販売で販売されている情報のことです。
情報商材そのものがすべて違法というわけではなく、情報を適正な価格で販売することは、特に問題ありません。
最近では、「note」で有料noteを販売することもありますが、これも情報商材の一種です。
媒体や内容は違えど、過去から現在に至るまで様々な情報商材が販売されており、その多くは有益な情報を販売する正当な情報商材と言えるでしょう。
しかし、残念ながら、悪質で詐欺や特定商取引法違反に該当する可能性のある違法な情報商材も少なからず存在します。
弁護士や消費者庁、国民生活センター、全国の消費生活センターでは、消費者被害を引き起こす悪質な情報商材に警鐘を鳴らしています。
消費者庁が消費者問題の集約と今後の消費者政策の方向性を示すために毎年発表している「消費者白書」によると、情報商材詐欺の相談件数は増加傾向にあります。
年代別では、20代の被害が年々増加しています。
情報商材詐欺の種類と形態
情報商材には、PDFなどの電子メディア、動画、メールマガジン、アプリケーション、冊子、USB、DVDなど、さまざまな形態があります。
情報商材詐欺で最も多いのは、副業、投資、ギャンブルに関するもので「この情報商材を買えば儲かる」という勧誘です。
副業では、アフィリエイトやブログ、せどり、最近ではYouTubeやInstagramのアフィリエイトの手法など。
投資系では、FX、仮想通貨、バイナリーオプション。
ギャンブルでは、競馬やパチンコの必勝法があります。
情報商材自体の価格は安く設定されていても、執拗な電話勧誘などにより、高額なソフトやコンサルティングサービスなどのバックエンド商品を購入させられるケースもあります。
時代や流行によってフロントエンドやバックエンドの商品自体は変化していますが、情報商材詐欺を行うスキャマー(悪質な情報商材業者)が行う手口の基本的な構造は同じです。
集客・誘導から契約、支払いの一例を紹介します。
①SNSなどを利用した広域的なアプローチ
②LP(ランディングページ)勧誘
③メルマガやLINEアカウントで囲い込み。
④無料商品、情報商材を1万円から購入誘導
⑤高額なバックエンド商品やコンサルティングなどの契約・入金を誘引する電話勧誘
これらをひとつひとつ見ていきましょう。
SNSなどを利用した広範なアプローチ
詐欺師(悪質な情報商材販売者)は、様々なアプローチで情報商材詐欺を行います。
近年、悪質な情報商材詐欺の被害に遭いやすいのは、SNSを利用した方法です。
LINE、Facebook、Twitter、Instagramなど複数のSNSアカウントを作成し、DMで被害者に有益な情報を連絡するケースが多く見られます。
最近では、YouTubeやTikTokなどの動画で勧誘することも増えています。
また、求人サイトや転職サイトなどに広告を掲載するケースもあります。
さらに、悪質な情報商材詐欺師は、グループで活動することもあり、具体的には、類似の情報商材を販売する法人(会社)または担当者を複数用意し、それぞれが営業活動を行うのです。
このようなグループは、グループ内で顧客情報を共有するだけでなく、過去に情報商材や高額商品を購入した人のリストをリスト業者から購入し、計画的に顧客を勧誘しています。
これらの集客方法は、情報商材詐欺業者(悪質な情報商材屋)自身が行うのではなく、広告会社と呼ばれる別会社が行うケースもあるようです。
LP(ランディングページ)による勧誘
SNS上で収益性の高い機会を提供する紹介LPにユーザーを誘い込みます。
LP(ランディングページ)とは、ユーザーが広告のURLをクリックした際に表示されるWebページのことです。
その情報商材がいかに魅力的で収益性が高いかを説明するものです。
広告塔となるべきカリスマや、ニートだったが短期間で億万長者になった人、高齢にもかかわらず1日10分の作業で起業し大金持ちになった人など、成功事例として作成されることが多いです。
これらのLPは、メールマガジンやLINE@への登録や、無料または少額の情報商材の購入を誘導し、被害者の個人情報を取得するものです。
具体的な勧誘手口は、被害者にLPで勧誘した後、メルマガやLINEに登録させ、当該商品の魅力を継続的に訴求し、あらかじめ用意したメッセージをスケジュールに沿って定期的に配信する「ステップメール」というマーケティング手法がよく使われます。
その多くは、稼げる人の心理や稼ぐための方法などの情報を配信することで、「当該商品を購入することが稼ぐための近道である」という方向に教育・洗脳し、最終的に被害者が商品を購入するように誘導するのです。
無料または少額(1万円程度)の情報商材を購入するように勧誘される
LPとメールマガジンやLINEから、無料または少額の情報商材を販売するページに誘導されます。
これらのページでは、該当する情報商材を入手することで、誰でも簡単に大金を稼ぐことができる魅力的な商材が次々と宣伝されています。
この段階では、多くの人は無料または少額で情報商材を購入したくなるようになります。
しかし、実際には、これらの無料または低額の情報商材には、お金を稼ぐ方法、自分でお金を稼ぐ方法などの具体的な情報はほとんどありません。
書かれているのは、この簡単に大金を稼げる商材を誰でも効果的に実践するためには、バックエンドのツールやコンサルティングが必要だということです。
さらに、具体的な稼ぎ方の説明や、ビジネスのサポートについては、電話で問い合わせるように書かれています。
こうして、電話サポートを申し込ませるのです。
電話勧誘員は、高額なバックエンド商品やコンサルティングサービスを契約させ、その料金を支払わせます。
電話勧誘は、電話相談の予約などで電話番号を取得したところから始まります。
高額なバックエンド商品を執拗かつ強引に売りつける
この時、「高額なバックエンド商品の金額以上の収入が得られることが保証されています。だから、お金を借りてでも契約した方が得です」と説得し、契約させます。
その際、「万が一、稼げなかったとしても、返金保証がある」などと甘い言葉を囁くこともあります。
電話では冷静に判断できないため、バックエンド商品の高額な代金を支払わされてしまうことが多いのです。
情報商材詐欺を行うスキャマー(悪質な情報商材販売者)は、上記のような手口で情報商材詐欺を行います。
誘い方の具体的な内容
LP・販売ページでの勧誘方法
SNSに誘われた被害者が訪れる小型情報商材のLPやその後の販売ページには、「誰でも簡単に、確実に稼ぐことができます」などと書いてあり、スマートフォンに不慣れな高齢者、主婦、社会経験のない学生など、属性に関係なく稼げることをアピールしています。
例:1日10分程度の作業、ツールに従う、音読するだけなど、短時間で簡単な作業で稼げるなど
「確実性、再現性100%」「確実に稼げる」「絶対に損をしない」など、断定的な表現で確実性もアピールしてきます。
そうすると、被害者は「自分も短期間で簡単に、確実に稼げるのではないか」と思い、次のステップに進みます。
しかし、残念ながら、誰でも簡単に、確実に稼げる夢のようなビジネスは存在しないのが現実です。
ですから、このような誘い文句を聞いたときには、注意しなければなりません。
期間限定(タイムリミット)、特別価格(ダブルプライスラベル)
「期間限定」「先着10名様のみ」「今月中に申し込んだ方のみ」など、短期間だけ有効なオファーや、「通常価格は~円ですが、このページから申し込まれた方は~円引きになります」など、通常ならもっと高い商品を特別価格で提供していることをアピールします。
人は限定品に惹かれるため、「今だけ、あなただけ」「期間限定」のような特別なオファーに誘惑されるのは、人間の性です。
このような人間の性質を利用して、本来はないはずの期間限定や定価を表示し、特別な商品だと思わせるのがこの手口です。
このようなキーワードが表示された場合は注意が必要です。
カリスマ的な広告塔
悪質な情報商材詐欺やマルチ商法(ねずみ講、マルチレベルマーケティング、MLM)に共通しているのは、架空のカリスマ的な人物の存在です。
億万長者で、働かずに海外で悠々自適の生活を送っているカリスマがおり、そのカリスマが発明した画期的な儲け話を教えてくれるという話です。
あるいは、冴えない生活を送っていた人が、この情報商材で教えてもらったビジネスに出会って、ある日突然億万長者になったという話や、定年後の残り時間で、年金以上の収入を得ている高齢者の話などです。
これらは、「この商品を買えば、この人のようになれる」というイメージを具現化した、理想的なカリスマです。
しかし、多くの場合、これは虚構のカリスマです。
現実には、そのような人物は存在しないか、あるいは情報商材詐欺から集めた資金で成り上がっています。
したがって、カリスマ的な広告塔が顔を出している情報商材は、疑ってかかる必要があります。
その情報商材を使って儲けた成功者の話
これも非常によくある例で、「誰でも儲かる」という具体例であったり、実際に儲かる人の理想像を大衆化したものであったりします。
性別、年齢、職業、家族構成など様々な属性の人が、「パソコンやスマホなど機械音痴の私でも稼げた」「子育てや主婦業で忙しい合間に簡単な作業をして稼げた」など、具体的にお金を稼いだ成功事例を語っているのです。
もちろん、これらの話には裏付けがなく、情報商材詐欺を行う詐欺師が作り出した架空の話です。
ですから、一般人が成功したような話が載っていても、それを簡単に信用してはいけません。
以上のように、情報商材詐欺を宣伝する無料LPや販売ページでは、魅力的な情報や夢のような生活を送っているカリスマ的な人物を掲載し、被害者に「カリスマのように簡単に、確実に稼げる」と思わせ、期限付きの特別価格や二重価格表示で申し込みを誘導しています。という手口が使われています。
何度も言うように、甘い取引はありえません。
おいしい話ほど注意が必要です。
電話時の勧誘方法
情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材業者)は、上記のような勧誘の手法で接触してきた被害者を、電話での無料サポートに誘導します。
あるいは、情報商材の事前登録時や販売時に入手した被害者の電話番号に電話をかけるというものです。
被害者は、情報商材を利用して収入を得るための具体的なアドバイスが得られると考え、電話サポートを依頼します。
しかし、実際には、電話で具体的なアドバイスを受けることはなく、高額なバックエンド商品や、サービスを売りつけられるのです。
「100万円でも必ず100万円以上の収入を得ることができるので実質無料です」「あなたが稼げるように徹底的にサポートします」「稼げなかった場合は返金制度があります」「高齢者の方でも月30万円は稼いでいます」「誰でも簡単に、確実に稼ぐことができます」
など、「稼げる」「高くない」としつこいくらいに説得してきます。
現金振込で支払えない被害者は、クレジットカードでの支払いや消費者金融からの借り入れを勧められ、「支払日に支払額以上の収入が得られる」と言われ、早期支払いを迫られます。
しかし、言われるがままに製品を購入し運用しても、高額なバックエンド商品以上の収入を得ることはできません。
また、返金を求めても、「返金条件を満たしていない」として受け付けてもらえず、お金を返してもらえません。
具体例に見る情報商材詐欺の手口
情報商材詐欺の手口の具体例は、消費者庁のホームページで確認することができます。
消費者庁のホームページには、この消費者安全法に基づく手続きにより公表された悪質な情報商材詐欺の情報が掲載されています。
情報商材に関する直近の公表は、2020年10月7日の「ミネルヴァ事件」です。
この事件では、ミネルヴァが「せどり」という転売で利ざやを稼ぐビジネスを提案し、「せどりPro」「せどり」というツールやサポートを高額で販売し、1日30分の作業で月10万円以上稼げるとしていました。
具体的には、「社長コース」が110万円で、販売目標は1200万円でした。
販売方法は、上記の情報商材詐欺と同様です。
①LINEでのメッセージ
②9,800円の小型情報商材の販売
③電話勧誘
④高額なバックエンド製品「Sedo Pro」の販売・サポート
このような流れになっていました。
「誰でも簡単に、確実に稼げるというのが魅力です」「40万円コースに入会すれば、毎月10万円、年間総額100万円を確実に稼ぐことができます」「お伝えした作業をしていただければ、翌月のクレジットカードの引き落としまでにお支払いいただいた金額程度は稼げますので、実質的に負担はありません」「たとえ110万円支払っても、それ以上の収入を得ることができますので、ご安心ください」「78歳の男性でも月に30万円は稼いでいます」
などと勧誘していましたが、この場合でも、ほとんどの方が、実際に稼ぐことができず、このビジネスを断念しています。
なお、情報商材に関わる実際の詐欺については、以下の消費者庁のサイトに詳しく掲載されていますので、興味のある方は参考にしてください。
消費者庁ホームページ「せどプロ」掲載のリンク集
情報商材詐欺の返金の法的根拠について
情報商材詐欺の被害者は、失った金銭の返金を希望することがあります。
では、返金を求める法的根拠は何でしょうか。
社会科の授業でクーリングオフについて習った方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
クーリングオフ以外にも、消費者契約法に基づく取消し、民法に基づく詐欺的取消し、不法行為に基づく損害賠償請求などの事由が考えられますので、以下に説明します。
情報商材とクーリングオフ
クーリングオフとは、申込者が申込や契約を行い、法律で定められた書面を受け取ってから一定期間内であれば、無条件で申込の撤回や契約の解除ができる制度です。
クーリングオフは、「特定商取引に関する法律」(特商法)に規定されています。ここでは、クーリングオフ制度の概要のみを説明します。
クーリングオフが可能な対象取引は、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入、連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘引販売取引(内職商法)に限定されます。
情報商材詐欺の返金では、電話勧誘販売、業務提供誘引販売、連鎖販売取引に基づくクーリングオフが行われることが多いです。
訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入については8日間、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引については20日間のクーリング・オフ期間が設けられています。
ただし、この期限は、特定商取引法に規定する法定書面を受領した日から起算します。
この法定書面の要件は厳しく、情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材販売者)が、しっかりと要件を満たした法定書面を交付するケースはほとんどありません。
クーリングオフの意思表示は、必ず書面で行う必要があります。
クーリングオフの規定は、購入者等からの一方的な契約解除を定めているからです。この規定は、意思を明確にし、後日の紛争を防止するためのものです。
弁護士がこの手続きを行う場合は、意思表示の内容が証拠として残るように、内容証明郵便で送付する必要があります。
また、自身でクーリングオフを解除される場合は、内容証明郵便で行うことが望ましいです。
やむを得ず、ハガキ等でクーリングオフの意思表示をされる場合は、ハガキのコピーを保管し、書留等送達の記録が残る方法で郵送してください。
2021年、特商法が改正され、電子メールなどの電磁的記録によるクーリングオフの通知が可能になりました。
消費者契約法は、消費者が持つ事業者情報の質・量や交渉力に格差があることから、消費者の利益を守るために、不当な勧誘による契約の取り消しや不当な契約条件の無効化について定めています。
情報商材詐欺との関係では、不実告知、重要事項の不告知、断定的判断の提供などが問題となることが多いです。
不実表示とは、契約の重要な部分に関して虚偽の事実を記載することです。
情報商材詐欺の場合、1日5分程度の作業で誰でも簡単に大金を稼げるようなビジネスではないにもかかわらず、虚偽の事実を告げた場合がこれに該当します。
重要事項の不告知とは、契約の重要な部分について伝えるべきことを伝えないことでです。
情報商材の場合、実際には細かく設定された条件をクリアしないと返金されない決まりになっているにもかかわらず、その条件を知らせずに返金できることだけを伝える場合がこれにあたります。
断定的判断の提供とは、将来の不確実な事柄について、あたかもそれが確実であるかのように断定的な表現をすることをいいます。
情報商材でいえば、「必ず100万円稼げる」というようなことがこれにあたります。
悪質な情報商材詐欺では、このようなケースがよくあり、契約者は契約への加入意思表示を取り消し、契約に基づいて支払った金銭の返還を求めることができます。
また、特定商取引法では、不実告知、重要事項の不告知、顧客への威迫・錯誤を禁止し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を定めています。逮捕された事例もあります。
情報商材と消費者契約法
民法上、詐欺による虚偽の意思表示は取り消すことができます。
情報商材の販売において、販売者が事実と異なることを告げて騙した場合、その意思表示を取り消すことができ、この詐欺の取り消しに基づいて返金請求ができます。
また、詐欺に該当しない販売であっても、勧誘の方法が違法であれば、不法行為となり、損害賠償請求(情報商材やバックエンド商品の代金など)が可能です。
情報商材詐欺で返金してもらう方法
情報商材詐欺の被害に遭った場合、返金を受ける方法は主に3つあります。
被害者自身が返金を請求する方法、弁護士に返金を請求する方法、消費生活センター(消費生活センター)を通じて返金を請求する方法です。
弁護士に返金依頼をする場合、上記のように法的根拠や知識に精通した専門家に案件を任せられるというメリットがあります。
また、詐欺の返金に強い弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の送付、交渉、仮差押え、訴訟、差押え、口座凍結、チャージバック請求、刑事告訴など、複数の返金方法からお客様の状況や予算に応じた最適な方法を選択してもらうことが可能です。
一方、弁護士に依頼する場合、弁護士費用や報酬を支払わなければならないというデメリットがあります。
一方、ご自身で、あるいは消費生活センターを通じて返金請求する場合は、手数料を支払わなくてよいというメリットがあります。
しかし、自分で返金を請求するのはかなり難しいです。
なぜなら、情報商材を提供するスキャマー(悪質な情報商材販売業者)は、あらゆる手段を使って、被害者を自分の商材に騙されたカモにし、被害者が返金を受けられないように仕向けるからです。
したがって、被害額が小さい場合や弁護士費用を用意できない場合は、消費生活センターに相談して対処してもらうのがよいでしょう。
ただし、消費生活センターでは、訴訟などの強制的な返金措置はとれないというデメリットがあります。
情報商材詐欺の返金を弁護士に依頼する方法
弁護士が被害者に代わって情報商材詐欺の返金請求を行う場合、返金請求の方法は、内容証明郵便の送付、交渉、仮差押え、訴訟、差押え、口座凍結、チャージバック請求、刑事訴追など様々な方法が考えられます。
内容証明郵便の送付と交渉
内容証明郵便とは、郵便局から送られてきた文書の内容や日付を公的に証明する郵便のことです。
文書を送ったこと、送った日付、受け取ったことが客観的に証明されるため、弁護士は重要な文書を内容証明郵便で送ることが多い。
情報商材との関係では、クーリングオフの請求は書面であることが必要であり、内容証明郵便で送付することが望ましいとされています。
この内容証明郵便には、弁護士が被害者の代理人となったこと、当該情報商材の返金や損害賠償を請求する法的根拠が記載されます。
また、弁護士は、当該情報商材の違法性を指摘し、返金されない場合は刑事告訴や訴訟などの法的措置を講じることを明記します。
そのため、違法性を認識している情報商材詐欺師等の多くは、刑事事件化や訴訟提起を望まず、自主的に返金に応じる場合があります。
具体的には、情報商材詐欺を行うスキャマー(悪質な情報商材販売者)は、ある程度の金額が戻ってくることを期待していることが多いです。
これは、弁護士が現れるまで返金を求める被害者は少なく、弁護士が現れてから返金を行う方が、大掛かりにならず、なおかつ情報商材詐欺を継続できるため、結果的に得策であると考えているからです。
ある意味、詐欺や債権回収において、詐欺師や債務者は、面倒な人や自分に不利な行動をとった人に優先的に返金をする傾向があります。
したがって、情報商材詐欺を行うスキャマー(悪質な情報商材販売業者)にとっては、返金されるべき被害者であると思わせることが回収への近道となるのです。
また、相手方の証拠や情報が少ない場合、内容証明郵便の送付ではなく、相手方との直接交渉が行われる場合があります。
相手方と和解し、合意書を作成し、即日返金できたケースもあります。
仮差押え・訴訟・差押えなどの裁判手続き
お金を回収する最終手段として、訴訟などの裁判を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
裁判所を通じた手続きのうち、仮差押えは、正式な裁判の前に、相手方が財産を隠したり散逸したりするのを防ぐために、あらかじめ財産を差し押さえる手続きです。
一方、差押えは、裁判によって確定した判決や債務名義をもって、相手方の財産を差し押さえる手続きである。
弁護士による債権回収の王道といえるでしょう。
ただし、裁判手続きには時間がかかり、訴訟の提起から判決が出るまで、通常1~2年ほどです。
また、相手方の財産を差し押さえるためには、相手方の財産を特定する必要があります。詐欺師は、契約者名義の口座にお金を入れず、入れたとしてもすぐに引き出して財産を隠すケースが多いようです。
したがって、情報商材をめぐる詐欺事件では、訴訟等の手続が債権回収に有効でない場合がありますので、この点をご留意ください。
ただし、2020年4月より民事執行法が改正され、差し押さえ財産の調査方法の拡大や、「財産開示手続」の制度に対する罰則が強化されました。訴訟による差し押さえの実効性が高まることが期待されます。
資金移動業者救済法に基づく口座凍結について
振り込め詐欺救済法とは、「預金口座等に係る資金による被害の回復を図るための分配金の支払等に関する法律」の略称です。この法律は、犯罪に利用された預金口座等に係る資金に係る詐欺その他の犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とするものである。振り込め詐欺の救済等に関する法律」とも呼ばれる。
この法律は、闇金や振り込め詐欺などの詐欺事件では、犯罪者が預けたお金をすぐに引き出してしまうケースが多く、被害を回復するためには速やかに口座を凍結する必要があることから制定されたものです。
この振り込め詐欺救済法に基づき、警察や弁護士が詐欺師の銀行などの金融機関に対して、取引の停止などの措置(口座凍結)を要請します。
銀行などの金融機関は、この要請に応じて銀行口座を凍結します。
そして、銀行は、詐欺師等の口座名義人の預金債権を消滅させ、その債権の原資から被害者に回収分配金を支払います。
口座凍結の対象となる犯罪は、詐欺など他人の財産を害する犯罪です(振り込め詐欺救済法2条3項)。
詐欺罪や出資法違反などが代表的な例です。
特定商取引法などの情報商材分野の法律違反は、単なる特定商取引法違反では財産に対する罪にはならないため、対象外となります。
ただし、特定商取引法では、法定書類の不交付、虚偽記載等に対する刑事罰も規定されています。これらの犯罪に該当する行為により財産上の被害があった場合、「個人財産に対する犯罪」とみなされ、口座凍結の対象となります。
ただし、口座が凍結されても実際には犯罪が行われていない場合、口座凍結を依頼した警察や弁護士から不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性がありますので、慎重な判断が必要です。
この点、裁判例では、口座が犯罪に利用されたと信じるに足りる合理的な理由があったか、必要な捜査が行われたか、という観点から判断されています。
金融機関が詐欺師等の口座を凍結した場合、預金保険機構のホームページの記事で没収の公告が行われます。
この公告により、ご自身の口座が凍結されたか否かを確認することができます。
したがって、情報商材詐欺などの被害に遭った場合、相手の口座が凍結されているかどうか、ホームページで確認することができます。
預金保険機構のホームページへリンクします。
このように、契約者が情報商材詐欺の被害に遭い、弁護士が証拠関係等から詐欺罪や特商法上の犯罪行為に該当すると判断した場合、口座凍結による損害賠償を請求することが可能です。
返金/クレジット契約の解除
前述のとおり、情報商材やバックエンド製品の販売では、クレジットカード決済が多く利用されています。
このような場合、返金手段としては、チャージバック制度による返金や、クレジットカード契約の解除による返金などがあります。
チャージバックとは、クレジットカードの不正利用など一定の理由がある場合に、会員(被害者)に返金を行う制度のことで、国際ブランドが定める制度である。
国際ブランド」とは、VISA、JCB、Master Cardなどのクレジットカードブランドのことです。
これらの国際ブランドでは、チャージバックという制度が規定されている。
弁護士は、本件情報商材の売買契約が詐欺に該当し、特定商取引法および消費者契約法に違反すると主張し、契約の取り消しが可能であること、チャージバックレズンと呼ばれるチャージバックの要件が満たされていることを主張している。
クレジットカードで情報商材などを購入した場合の割賦販売法上の返金方法には、チャージバック請求のほかにも、次のようなものがある。
具体的には、割賦販売法では、情報商材等には売買契約の解除による抗弁権が規定されており、この抗弁権に基づき、支払停止の抗弁を主張する方法がある。
さらに、個別クレジット契約自体の解除を主張する方法もある。
これらの返金請求については、弁護士がクレジットカード会社や決済代行会社に対して内容証明郵便で請求することになります。
情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材販売業者)は、自らの信用でクレジット契約を締結することができず、決済代行業者を利用して保証金等の名目で多額の金銭を預けるケースが多くあります。
このような場合、決済代行会社から情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材販売者)に返金請求の連絡が入り、場合によっては取引停止、契約解除、預けた保証金等の没収が行われることがあります。
そのため、情報商材詐欺を行うスキャマー(悪質な情報商材販売者)は、上記の取引停止を回避するために、自主的に返金に応じることになる場合があります。
また、情報商材詐欺師(悪質な情報商材販売者)が自主的に返金を行わない場合でも、チャージバック等によって返金が行われるケースも実際には多くあります。
被害届と刑事告訴について
情報商材やバックエンド商品の販売は、販売者が嘘をついたり、特定商取引法で定められた法定書面を交付しなかったりすると、犯罪となります。
詐欺とは、嘘をついて人をだましたり(欺罔)、人をだまして金品を交付させること(錯誤)です。
情報商材販売において、虚偽の成功体験を捏造して、騙された人に金銭を支払わせることは、詐欺罪に該当する。
また、特定商取引に関する法律では、電話勧誘販売、業務提供誘引販売、連鎖販売取引において、不実告知、重要事項の不告知、脅迫・誤認を禁止しています。
これらの禁止事項に違反した場合、3年以下の懲役および300万円以下の罰金に処せられます。
特定商取引に関する法律
また、上記の取引では、特商法に定める要件を記載した法定書面を交付する必要があります。
この書面の交付がない場合、不備がある場合、または虚偽の記載がある場合、違反者は6ヶ月以下の懲役および100万円以下の罰金に処されます。
特定商取引に関する法律
これらの犯罪の場合、情報商材詐欺を行った詐欺師(悪質な情報商材販売者)は、被害届の提出や刑事告訴により刑事処罰を求めることができます。
被害届とは、犯罪の被害に遭った事実を報告することです。
刑事告訴は、犯罪の刑事処罰を求める意思表示です。告訴状は、告訴人に検察官への書類送付の義務を負わせ、告訴人の処分を検察官に通知するという点で、被害届より強力です。
情報商材詐欺の被害に遭い、詐欺や特定商取引法違反で被害届や刑事告訴をすると、警察が捜査し、場合によっては詐欺師を逮捕することもある。
このような場合、逮捕された詐欺師は、警察の拘束から逃れ、犯罪の最終処分を軽減するために、示談を申し出ることが多いようです。
この示談交渉の過程で、被害弁償を受け、さらに損害賠償金などを回収できる可能性があります。
しかし、情報商材の返金については、金銭の返金という民事事件と詐欺という刑事事件の境界線上にあるため、警察が動くことはあまりない。
これは、どの点が疑わしい行為とされ、どの点が詐欺行為と証明されるかなど、警察が捜査して刑事事件として立件することが困難なためと思われます。
しかし、情報商材で逮捕されたケースは何件かある。
直近では、2020年10月2日にバイナリーオプションに関する情報商材を販売したとして逮捕されています。逮捕者の中には、法定書類不履行や不実告知で逮捕されたケースもあります。
特商法違反の疑いで逮捕者が出た。
岡山県警は、投資関連のノウハウ情報の売買契約において、クーリングオフが可能であることを説明しなかったとして、特定商取引法違反(不備な書類の交付、不実告知)の疑いで男女4人を逮捕した。同署は、愛媛、大阪など24府県で20代を中心に約450人が被害に遭った疑いがあるとみている。被害額は3億5千万円以上とみられ、捜査が進められている。
岡山県警によると、岡山市北区平和町の自営業○○(27)、岡山市北区大久保の営業○○(21)ら4人が逮捕された。県警は2容疑者の身分を明らかにしていない。
容疑者らは今年1~3月、岡山県内の20代の男性3人に金融商品「バイナリーオプション」の取引に関する情報を提供する契約を持ちかけ、クーリングオフを申し出て逮捕された。連絡不要」の制度があることを客に説明しなかったとされる。
以上のように、情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材販売者)からは、被害届や刑事告訴、示談という形で被害を回復する方法があります。
情報商材詐欺の返金に成功した例
これまで、情報商材詐欺とその手口、返金方法について解説してきました。
ここでは、実際に当事務所の弁護士が情報商材詐欺の被害者から返金交渉や損害賠償請求を行い、被害者からの金銭回収に成功した事例を紹介・解説していきます。
**依頼者が特定されないよう、実際の情報は変更しています。
情報商材詐欺の返金成功事例1:チャージバック請求による返金
依頼者は大阪府在住の主婦。
出会い系サイトで知り合った男性から「自動売買ツールを使えば簡単に儲かる」と仮想通貨投資について勧誘され、情報商材詐欺師が行うセミナーに参加することにしたそうです。
セミナーでは、AIを使った自動売買ツールを使えば、誰でも簡単に資産を10倍以上に増やすことができると言われたそうです。
そして、セミナーで紹介されたウェブサイト(LP)を見て、無料情報商材に申し込んだ。
無料情報商材は、セミナーと同じく、簡単に大儲けできることが書かれており、その最後に無料電話サポートの申し込みフォームがあった。
無料電話サポートに申し込むと、すぐに情報商材業者から電話がかかってきた。
その情報商材業者は、仮想通貨の自動売買ツールを使えば、誰でも簡単に大金を稼ぐことができるという。この自動売買ツールにはいくつかのプランがあり、高額なプランになるほど機能が充実し、高いリターンが期待できる。一番安いプランでも30万円はする。
手持ちの資金がないのでツールの購入は難しいが、後で必ず儲かるのでクレジットで購入した方が良いとおっしゃっていました。このサービスには容量があり、今日買わなければ次にいつ買えるのかわからないと言われた。と言われ、クレジットカードの限度額である50万円で仮想通貨自動売買ツールを購入させられてしまったそうです。
そして、その場で、情報商材業者と電話しながら、クレジットカードの決済手続きをさせられたという。
顧客が情報商材業者に仮想通貨自動売買ツールでは儲からないことを伝えると、情報商材業者は、もっと儲かるように機能を追加した上位プランを購入するよう勧誘するだけで、何も改善されなかった。
依頼者は、返金を求めることを決意し、弁護士に依頼した。
弁護士は、依頼者がクレジットカードで仮想通過型取引ツールを購入していたことから、チャージバック請求による返金を行うことにした。
当該情報商材会社の営業行為は、特商法上の業務提供誘引販売や電話勧誘販売に該当し、法定書面も交付されていなかったため、依頼者はクレジットカード契約を解約し、クレジットカード会社及び決済代行会社に対し、解約期限を定めずにクーリングオフが認められるとしてチャージバック請求を行いました。返金請求を行うことができました。返金を要求する内容証明郵便を送付した。
その結果、チャージバックが認められ、情報商材詐欺による被害額の全額を返金することに成功しました。
情報商材詐欺の返金成功事例(2)内容証明郵便による返金と交渉の結果
お客様は東京都新宿区にある会社にお勤めの男性です。
仕事帰りや休日の時間を有効に使うため、インターネットで副業を探していたところ、1日30分の作業で月100万円稼げることを知り、2,000円以上稼げるという広告を見つけたそうです。
そこからLINEに誘導され、「無在庫転売で稼げる」「高額で転売できる商品を教えるので誰でも簡単に稼げる」などの説明を受け、1万円で情報商材を購入した。
しかし、情報商材には稼ぎ方の詳しい情報はなく、電話で説明を受けるように誘導された。情報商材に記載されている電話番号に電話をかけると、確実に稼ぐためには有料の電話コンサルティングを受けなければならないと思い込まされ、130万円の有料コンサルティングの契約をさせられてしまったそうです。指示通りに130万円を銀行口座に振り込んだ。
契約後もメールマガジン(メルマガ)で抽象的な説明資料が送られてくるだけで、実際に商材を使用して稼ぐことはできなかった。
依頼者は自ら情報商材業者に電話をして返金を求めたが、同社は「返金はできない」と譲らない。
弁護士は、依頼者から情報商材詐欺業者に対する返金請求と損害賠償請求を受け、本件ではクーリングオフが可能であること、不法行為に基づく損害賠償請求ができること、情報商材の代金131万円の返金請求ができることを説明しました。依頼者には、情報商材の販売方法が特商法に違反するため、返金に応じない場合は刑事告訴を検討する旨を記載した内容証明郵便を送付しました。
その後、情報商材詐欺師から弁護士に電話があり、現在、返金請求が殺到しており、破産を検討しているため、総額の30%(39万円)を返金するとの申し出がありました。
弁護士は、依頼者と相談し、破産のリスクも考慮し、依頼者と交渉することにしました。依頼者は半額程度の返金を希望していたため、交渉の下限を半額の65万円とした。
弁護士が情報商材詐欺業者と粘り強く交渉した結果、依頼者は総額の8割以上にあたる105万円の返金を受けることに成功しました。
情報商材詐欺の返金方法の概要
以上のように、情報商材詐欺の手口は様々ですが、共通する部分も多くあります。
そのため、共通する要素を理解することで、情報商材詐欺の被害に遭わないようにすることが可能です。
また、仮に被害に遭ったとしても、内容証明郵便の送付、交渉、仮差押え、訴訟、差押え、口座凍結、チャージバック請求、刑事訴追など、様々な方法でお金を取り戻すことが可能です。
お客様の場合、どのような方法で返金請求するのが適切か、ご検討ください。
また、相手がまだお金を持っているうちに、そして相手が逃げる前に返金請求をするという時間的な問題もあります。
実際、返金請求した被害者は速やかに返金を受け、時間が経過してから返金請求した被害者は返金を受けられないということがよくあります。
したがって、詐欺の被害に遭ったことに気づいたら、すぐに行動することをお勧めします。
まずは、還付金詐欺を専門とする弁護士、消費生活センター、警察などに相談されることをお勧めします。